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ベルトコンベアで検査するときの測定下限値とは、検出限界値のことではない

福島県では、今年8月下旬より早場米「五百川」の収穫が始まると同時に、米の全袋放射能検査がスタートしました。
全袋検査は、米の生産農家が自分の家で食べる分や、親戚などに譲ったりする贈答用(非流通分)など、すべての米が対象です。

ビデオニュース・ドットコムで定期的に福島県の現地取材報告をしている医療ジャーナリスト、藍原寛子氏の最新・福島報告(2012年09月28日収録) です。

福島でコメの全袋検査始まる (報告:藍原寛子氏)



《検出下限値の数値は、検査・測定した米の放射能を示すものではない》

福島県では、昨年、二本松市や、福島市の大波地区、県北地区から基準値(500ベクレル/kg)超えの米がたくさん出てきて出荷停止が相次いで出された。

昨年、暫定基準値の500ベクレル/kg超えの米が収穫された福島氏、伊達市、二本松市の各市、それに浜通りの福島第一原発に近い場所、避難区域や計画的避難区域では、そもそも最初から作付けしていないので(収穫されないので)、今回の全袋検査対象には入っていない。

その他、去年、100~500ベクレル/kgまで間の値が検出された地域については、事前に出荷制限が行われ、水田の除染がいっせいに行われたり、市町村が 水田の台帳に基づいて、きちんと除染しているか、などを今後、計画的にチェックしていくという前提で、計画的に作付けが許可された。

8月25日、福島県の全袋検査がスタートした初日に、報道関係者に検査の現場が公開された。

検査現場はガレージや倉庫などで、外界の空気とつながっているため、福島の給食を計るときに導入されたゲルマニウム検査器のように、バックグラウンドからの放射線の影響を遮断するような構造になっていないため、これを補正する必要がある。

それが、測定下限値の設定で、ベルトコンベアー式検査機のモニターに表示される(下のキャプチャー)11bq/kgとかの数字は、ゲルマニウム検査機のところで出てきた検出限界値のことではない。

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画像の11bq/kgとは、米袋の中の米に11bq/kgの放射能が含まれている、という意味ではなく、ベルトコンベア方式検査機で計測するために、最初に設定する基準値に過ぎない。

外界とつながっているオープンな環境で測定すると、当然、外からの放射線(バックグラウンドからの影響)も受けてしまい、正確には測定できないため、ある基準値を設けて、それに基づいて計測している。

本来は、米袋そのものから放出されている放射能だけを計測したいわけだから、米袋以外からの放射能の影響分を除外しなければならない。

そのための線引きの基準が「測定下限値」という数値設定。

厚生労働省は、測定下限値を、最大で25bq/kg以下に決めている。

つまり、今年の4月から実施されている新食品基準値の100bq/kgの4分1以下に測定下限値を設定して計測しないと、100bq/kgを超えて放射能汚染されている米袋もバスしてしまう。

検査機の測定下限値が25bq/kgなら、国の新基準値100bq/kgギリギリの米(玄米)である

厚生労働省の「放射性セシウムスクリーニング法」では、測定下限値を以下のように説明している。
以下は、測定下限値について書かれてある2ページと3ページの一部をつなげたもの。
画像をクリック→拡大してください。

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本来であれば、原子力安全委員会がまとめた「緊急時における食品の放射線測定マニュアル」に書かれているとおり、ゲルマニウム検査器などによるモニタリングを行うべきであるが、米のような検体が大量の場合に、計測時間がかかりすぎて現実的ではない。

そこで、今回は、モニタリングよりも、スクリーニング(ふるい落とし:放射能汚染度が一定基準値以下のものしかパスさせない)することに重点を置いて、各メーカーに検査機を開発させた。
それがベルトコンベア方式によるスクリーニング検査機。

スクリーニング(ふるい落とし)優先だから、一袋ごとに放射能の値は誤差が大きい。

あくまで、厚生労働省が決めているのは、ベルトコンベア方式検査機の「測定下限値は25bq/kg以下」に設定して計測すること、です。

ベルトコンベア式検査機のメモリを25bq/kg以上(下限値)に設定すると、国の新食品基準値の100bq/kgを超える米までもが、検査をバスして市場に出てきてしまう。

また、バックグラウンドが毎日、変化するので、検査機の「下限値」の設定を毎日、その都度、変える必要がある。

雨が降っている日には、当然、パックグラウンドからの放射線が多くなるので、それを補正してくれる「測定下限値」の設定も変更する必要がある。(測定下限値は、その都度変更される)

福島の全袋検査では、場所や検査する日によって、測定下限値をいろいろ変えている。
福島では14~19bq/kgあたりのレンジで変えている模様。

つまり、下限値を仮に19bq/kgに設定して検査した日は、誤差も含めて90bq/kg前後の放射能米が検査をパスしていると考えることができる。それが市場に出ていくということ。

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藍原氏が取材したのは、二本松市の検査の模様です。
そこで使用されていたベルトコンベア方式検査機は、島津製作所が作ったものです。

福島県の他の米生産地では、富士電機や三菱重工が開発した同タイプの検査機を使っています。

この二本松で使用されている島津の検査機は1台2000万円です。
これ↓が、その検査機です。

画像クリックで島津のサイトへ
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赤の囲みの中に、
・検出限界  
5.0Bq/kg以下 (225秒測定)
・測定下限値  
基準値100Bq/kgのとき 20Bq/kg以下(5秒測定)
基準値50Bq/kgのとき 10Bq/kg以下(15秒測定)          
と記されてあります。

検出限界とは、225秒(4分弱)の長い時間、測定しても、この機械では5.0Bq/kg以下は計測不能であるという意味。

測定下限値
とは、この検査機で測定下限値を20Bq/kgに設定して、5秒計ったとき(ベルトコンベアの速さは、かなり速いということ)100Bq/kgまでの放射能を含んでいる玄米の米袋は、ふるい落としに引っかからずに検査にバスしたことになる、という意味です。

同じく、検査機の測定下限値を10Bq/kgに設定して、15秒計ったときは、50Bq/kgまでの放射能を含んでいる玄米の米袋はバスする、という意味です。

含まれている放射能の量を正確に測定しようとすればするほど、測定時間が長くなるので、米など大量に計測しなければならない場合は、どうしても大雑把になるのは仕方がない。

再び、福島のメディアは「安全キャンペーン」

これは、今日(10月4日付)の福島民報の記事です。
全て下限値未満 坂下で県内初の一般米全袋検査

「……早場米以外の全袋検査は県内で初めて。この日調べた主力品種の「ひとめぼれ」617袋(1袋30キロ)の放射性セシウムは全て検出下限値(1キロ当たり25ベクレル)未満で、JAパールライン福島に出荷された」
と書かれています。

ここに書かれている検出下限値というのは、ゲルマニウム測定機のように放射能をモニタリングしたものではなく、ベルトコンベア方式の検査機のスクリーニング(ふるい落とし)の基準値のこと。

検出下限値という言葉は、検査したかのような印象を与えます。

これは、計測しているのではなく、ふるい落としをするための基準値に過ぎないのに、福島民報は、あたかも米袋に含まれる放射能が1キロ当たり25ベクレル以下であったかのように書いています。

これは、こうした知識のない消費者を錯誤に誘導するものです。

福島民報が言う「検出下限値(1キロ当たり25ベクレル)未満」というのは、正しい定義で解釈するなら、1キロ当たり100ベクレル以下の放射能汚染度であるということです。1キロ当たり25ベクレルの放射能汚染という意味ではありません。

また、福島民報が意図的に使っている、検出下限値という言葉は、どこの専門的サイトにも見られないのです。

測定下限値の設定は、検査時間(秒単位)の長さと、下限の値の両方で決まります。

計らなければならない米の量に比べて、ベルトコンベア方式の検査機の台数が少なければ、国や県から、物言いがつかないように「検査はした」という事実を、なんとか作ろうとするでしょう。

その場合は、ベルトコンベアのスピードを上げるのです。

この検査機は、オペレーターによっても、いかように操作できるので、検査結果に全面的な信頼を置くことはできません。
福島県の全袋検査をしている人たちは、講習を受けただけの素人さんです。


南会津での全袋検査。「安全な米を出荷」だそうです。

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南会津は、富士電機製のベルトコンベア方式検査機を導入したようです。

(上から2番目の画像)測定中は、モニターの下側に2つの赤いボタンが出てきます。
測定が終って、パスすると、右側のボタンが赤から青に変わります。(上から3番目)

ただし、「この条件での下限測定は セシウム18.8Bq/kg」とモニターに表示されています。
そして、測定時間は8.8秒に設定されています。

つまり、セシウム134とセシウム137の合計が、ほぼ100Bq/kgちょうどになるように、測定下限値を18.8Bq/kgに設定しているのです。
さらに、検査時間は、わずか8.8秒だけ。

この意味は、100Bq/kg以上、放射能汚染されている米は省かれた、ということを意味します。


会津美里町での全袋検査の様子(10月1日)

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会津美里町では、三菱重工製のベルトコンベア方式検査機を導入。

二本松の早場米が8月28日が、店頭に並んだ

画像クリックで拡大表示
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JAのみちのく安達の関係者のコメント。
(最初から45秒)

検出限界値以下ということで、非常に安心、安堵しています。
報道でも、取り上げられたお陰で、全国から注文が来ており、完売状態。
そうしたことから、放射能の心配がないことを消費者の方にも理解いただいたところです」。

このJAの担当者は、よく分かっていないのではないか。

ここまで読んだ人は、この画像を見て、腑に落ちない点があるのではないでしょうか。

いちばんの下の「25以下ベクレル/kg で検査点数16点とあります。
これは、「セシウム134とセシウム137の合計値」であると書かれています。

であれば、ベルトコンベア方式の検査機の「測定下限値」を6~8ベクレル/kgに設定していることになるのです。
ここまで下げた場合は、数分、計測しないと答えは出ないはずです。

これを、どう考えたらいいのか。


下は、7月31日時点の収穫予想です。

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数値は米穀データバンクの予測データを利用

福島県は、予想の371,100トンを下回って約35万トンでした。
これは、全国の4.4%に当たります。それが、毎年、毎年出てくるのです。

この全袋スクリーニングは、、ふくしまの恵み安全対策協議会によって進められ、管理されています。

「もも」と「玄米」の放射性物質検査情報は、その都度、こちらのサイトで見ることができます。

90bq/kgベクレルの放射能が含まれている米は、とんでもなく危険だと思ってきました。
しかし、全袋検査してパスした米は、同じ90bq/kgベクレルの放射能が含まれていても「安全な米」に変わってしまうのです。

この拙速な検査が提供するのは、「安全」ではなく「安心」です。
「安全」と思い込みたい気持ちが「安心」へ誘うのです。

子供には、食べさせるべきではありません。




穀物検定協会 特Aランク 評価のお米 佐賀県JAからつ 東松浦地区産さがびより 10kg (5kg×2袋)
4,680 円

穀物検定協会 特Aランク 評価のお米 佐賀県JAからつ 東松浦地区産さがびより 10kg (5kg×2袋)

               
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